Fleche2012(阿賀野→犬吠埼)~プロローグ

「生きてるって素晴らしい!」


今回のFleche407を完走した感想がコレである。明らかに何かおかしい。
私たちのブルベは、ブルベではなかった。


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そもそもFleche(フレッシュ)とは?

通常のブルベはルートが全て決まっており、これを規定時間内に走るのがルールである。これに対してFlecheは、ゴールだけが決まっており、ルートは自由に引いてよい。ただし、距離は360kmを超える必要がある。

もう1つ違うのは、チーム戦であるということ。3~5人で固まって走る必要があり、3人以上でゴールしないと完走とは認められない。

要は「24時間で360kmをチームで走る」のがFlecheと言える。

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Flecheの存在を知ったのは、ロングライダースVol2.0(コミックZIN様にて好評発売中!)にも掲載されている2011年のFlecheの一ヶ月前だった。

  「Flecheに向けて練習をするよー」

ということで、房総半島を24時間掛けて走る「Fleche練」が企画された。私は2011年にはFlecheにはエントリーしていなかったのだが、その練習に声を掛けられていた。準備はしたものの当日は生憎の雨予報。雨の苦手な自分は早々にDNSを決めてリタイヤ。きっと皆も走らないんだろうな~と思ったら。なんと私以外の全員がスタートしていた。


  「軟弱すぎる。キャノンボーラーはこの程度なのか!」


我ながらとても情けなかった。もしブルベに出ることがあれば、多少の悪天候でも出走はしよう。駄目ならDNFすればいいさ。この時、そう誓ったのであった。


・・・この誓いがまさかあんな恐ろしい出来事を呼ぶなんて、この時には全く思わなかったのである。


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2012年のFlecheのゴールは千葉の犬吠崎。関東での開催ということもあり、全国から36ものチームが参加した。私がエントリーしたのはその中の1チーム「ニコ生自転車部」である。

当初、私はキャノンボーラーを集めて、鈴鹿峠あたりから犬吠崎を目指して走るコースを考えていた。元プロで現在はブルベ魔人となっている三船さんのチームが600kmを走るというので、それに対抗しようと思ったのである。・・・が。今年のFlecheは関東開催ということもあり、エントリーが集中。気づいたら締め切りとなっていた。

しかし、Flecheには参加してみたい。というわけで、一番なじみの深いメンバーが走る「ニコ生自転車部」に混ぜてもらうことにした。サコライド伊豆で知ったことだが、チーム走というのはペースが重要。知らない人同士が一緒に走るとペースが合わずに非常に大変なことになる。その点、ニコ生自転車部の面々とは何度か走っているし、大丈夫!(と思っていたのだが、実際にはこれが大間違いであった)


ここで今回のメンバーを簡単に紹介。

【チーム・ニコ生自転車部】
・アーツさん
ニコ生自転車部の部長。ネタのためならなんでもやる方。今回もそのネタ探求精神がいかんなく発揮された。自転車はSPECIALIZED。

・ホラフキーさん
ニコ生自転車部員。ご近所さんで、家は500mも離れていない。最近一緒によく練習してる。発言の8割はホラである。自転車はFelt。

・マリオさん
ニコ生自転車部員。PBP完走のブルベ超人。今回のFlecheが認定されれば「ランドヌール5000」のタイトルを獲得できる。口癖は「これがブルベですよ!」。自転車はFelt。

・baru
ニコ生自転車部員。自転車はSPECIALIZED。


私が言うのもなんだが、一癖も二癖もあるメンバーであるw それは本文を読み進めてもらえば自ずと解ってもらえるであろう。


(つづく)
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Fleche2012(阿賀野→犬吠埼)~スタート前

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4/6 PM12:00。私とアーツさん、ホラフキーさんの3人は新潟駅に降り立った。今回のスタートは新潟の阿賀野。新潟からちょっと内陸に入ったところである。ここから銚子まで、北西へ一直線に走るわけだ。気温は肌寒いものの、懸念していた雪は降っていない。

まずは腹ごしらえということで、ニコ生自転車部のアザミさんオススメの店「フレンド」へ。ここはB級グルメとして有名な「イタリアン」が食べられる。

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イタリアンと餃子のセット。ミートソース焼きそばといった感じである。どの辺がイタリアンなのか良く解らないw 餃子は私が作った方が美味い(酷 でも全体的には結構満足。B級グルメ然としていた。


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食後は日本海へ。目的は、日本海の水。これを汲んで、ゴールである銚子の太平洋まで運ぶのだ。

  「日本海の水を、太平洋に注いだらどうなるか?」

東京→糸魚川ファストランの起源と言われる出来事の逆パターンというわけ。


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阿賀野のホテルまで自走し、隣接した居酒屋で翌日に向けて決起会。


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寿司定食(1580円)。ふつーの定食かと思いきや、かなりの豪華さ。ボリュームもたっぷりで翌日に向けて英気を養うことが出来た。これは明日は楽しいロングライドになりそうだなーと思っていた。




そう、この時までは。



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夜中、あまりの寒さに目が覚めた。とりあえず携帯で時間を見ると午前3時。なんとなくTwitterを見てみると、Fleche参加者はもう動き出しているようだ。自分たちもあと数時間でスタートだよなぁ・・・などと思いながらTLを見てると、一件の写真付きTweetが目に留まった。隣の部屋で寝ているはずのアーツさんのTweetである。


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  アーツ「まぁ!なんて綺麗なの?」


思わずカーテンを開いた。窓の外は一面の銀世界が広がっているではないか・・・。おかしい、22時に寝た段階では雪なんて影も形も無かったのに。これが雪国という奴なのか。生まれてこの方関東以外に住んだことがない自分にはカルチャーショックであった。

・・・ともあれ、これでは翌朝は凍結で走れまい。せっかく新幹線で来たのに勿体無いが、雪なら仕方ないさ。そういえば土曜日は、がんちょさん主催のヤビツ峠練習があったはずだ。輪行でヤビツに直行しよう。

そう思い、再び床に着いた。


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翌朝。アーツさん、ホラフキーさんと朝食を食べながらどうするか相談をする。とは言っても、この状況で走るわけなんてない。ただ、もう一人の参加者であるマリオさんは北海道からわざわざ新潟までフェリーでやってきて、既に新潟港についているらしい。

   アーツ「とりあえずスタート地点まで行って、最寄の水原駅から輪行しましょうか」

これに皆同意して、とりあえずスタート地点である「ローソン阿賀野中央町店」へ向かうことになった。幸い、雪はやんでいたが解けた雪で路面はドロドロ。ホテルからスタート地点まで4kmくらい。そこからは輪行だし、それくらいなら走れるだろう。先日、ウェット路面で落車したばかりの私は細心の注意を払って走った。


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ローソンに到着すると、既にマリオさんの自転車が。今回のコースを設定したマリオさんはどこか申し訳なさそうだった。

  マリオ「いやー、まさか雪だとは・・・ここでリタイヤでも僕は何も文句言えません」
  アーツ「まぁ、でもせっかくだから行ける所まで行きますか!」
  ホラフキー「そうですねー。」


・・・え?あれ、今から水原駅行くんだよね?輪行するんだよね?帰ってヤビツ行くんだよね?と思ったものの、言葉を飲み込んだ。一年前のフレッシュ練DNSの悔しさが浮かんだからであった。不幸中の幸いか、路面は雪があるものの、気温は上がり、空も晴れてきている。ただ、行き先に見える山々は一面の雪化粧。山まで行けば雪で走れないことは明白なので、そこまで行けばどうやってもリタイヤになるだろう。何より、スタートもせずにリタイヤする情けなさはもう味わいたくなかったのだ。この小さな意地が後々大変なことになるのだが・・・。


そうと決まれば、背負っていた荷物を自宅へ送り返す作業に入る。どうせすぐにリタイヤすると思っていたので、キューシートも荷物に入れてしまい、せっかく持ってきたボルダースポーツ(股ズレ防止剤)も塗らずに同梱。翌日の夜中指定でサクっと送ってしまった。


スタート時刻である9時を過ぎ、レシートをもらっていざ出発。ニコ生自転車部のFleche407が始まった。

(つづく)
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Fleche2012(阿賀野→犬吠埼)~①阿賀野~会津若松

■ルート


■レポート
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気温が上がって解けた雪を後輪が跳ね上げまくる。泥除けが上手く付かなかったため外してきたのが仇となり、スタートしてすぐに尻はビショ濡れとなった。ホラフキーさんとマリオさんは泥除け装備。アーツさんは泥除けはつけていなかったものの、オルトリーブのサドルバッグLが泥除け代わり。この辺りにも悪天候走行の経験の差が見える。

PC1は山を越えた会津のセブンイレブン。この時点で会津の予報は吹雪。スタート直前に見た郡山のライブカメラも一面の銀世界が広がっていた。恐らくPC1には辿り着けないだろう。そこまでは尻がビショ濡れでも我慢することにしていたのだが・・・


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寒い。とにかく寒い。空は晴れているが、気温は一桁。それにプラスして、ビショ濡れとなったタイツとシューズから寒さが流れ込んでくる。まだ夜も迎えていないのに、体の芯が冷えてきているのが自覚できた。

・・・これは体温を上げなくては不味い。しかし、ブルベのペースは自分には少し遅すぎた。心拍が全く上がらず、体は冷える一方。協調性を乱すのは気が引けたが、このままでは走れなくなってしまう。

  「すいません、ちょっと体暖めます!」

と宣言をして、ガチ走行開始。幸い登りなので、ダンシングをしなければまずコケる心配も無い。雪で走れなくなるところまで行って待っていることにした。


福島に入ると、少しだけ雪がパラついてきた。しかし走れなくなるほどではない。恐らく後続の3人も同様の判断をするだろうと思い、先へ進む。西会津に入ると、雲が切れて晴れ間も出てきた。結構温かい。これはもしかすると、PC1くらいまでは行けるんじゃないか?会津若松まで行けば輪行もしやすい。

あと少しで一旦休める。盛り上がった気分のまま、PC1前の最高標高地点である七折峠のトンネルに突入する。ここを抜ければあとは下るだけ!トンネルの出口めがけて一直線!


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―――トンネルを抜けると、そこは猛吹雪だった。

トンネルは山と山の間にある。山一つ向こうは別世界だったのだ。

  「会津が吹雪なんて予報嘘じゃん☆」

などと思っていたが、嘘ではなかった。・・・こりゃーもう無理だな。ここまでだろう。残念だがPC1には辿り着けなかった。でもここで引き返すのも大人の決断。

携帯を見ると、ホラフキーさんからメールが入っていた。


  「マリオさんの提案によって60km地点の道の駅で休憩してます。」


どうやらマリオさんの調子が悪いらしい。昨年はPBPを完走したマリオさんだが、今年に入って60kmしか乗っていない状態で今回のFlecheに突入。さしものブルベ超人もカンを取り戻すのに手間取っているようだ。

とりあえず戻ろう。トンネルを逆方向に抜けて、10kmも走れば合流できるはずだ。そう思って再びトンネルを抜けると・・・

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また吹雪だった。峠の向こうの雪雲がこちらにもやってきたらしい。行くも地獄、戻るも地獄。これはもう一旦、どこかに逃げ込むしかない。来る途中に見たセブンイレブンに飛び込んだ。冷え切った体を温めるため、から揚げ、フライドポテト、ココアを投入。温まる・・・。

しばらく待っていると雪も上がったので、合流すべく元来た方向へと走り出・・・そうとしたら、対向車線に見覚えのある3人組。私がコンビニで休んでいる間に追いついてきたようだ。


  baru「トンネル抜けたら猛吹雪でしたよ・・・PC1たどり着けますかね?」
  アーツ「とりあえず行ってみましょうか。」

  
  
再び七折峠のトンネルを越えると・・・アレ、雪は残ってるものの、吹雪は止んでいた。山の天気は変わりやすいということか。・・・できればこのままリタイヤしたかったのだが、止んでいるこの状況ではそれも言い出しにくい。若干路面に雪は残っているものの、走るには問題なさそうなので、PC1へと坂を下った。


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13時54分、出発から4時間54分で80km地点のPC1に到着。グロスAveは16km/hと、辛うじて貯金は保てている。

  ホラフキー「とりあえずこれで遭難の心配はなくなりましたかね。」
  マリオ「おそらくこの先、雪が振りそうな所はないはずです。」

  
先ほどまでの吹雪が嘘のように、路面は乾いていた。空の様子を見ても、怪しい雲は我々が来た方向のみ。目指す方向の空に問題はなさそうだ。


当然ここで終了とはならず、PC2を目指すことになった。また一つ、引き返すことの出来る選択肢を無視して・・・。



(つづく)
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Fleche2012(阿賀野→犬吠埼)~②会津若松~湯野上温泉

■ルート


■レポート
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PC2からは、進路が南へと変わる。素晴らしい追い風で脚が回りまくる。風景も良く、東北の山々が青空に映えて美しかった。


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途中通りかかった芦ノ牧温泉は渓谷の中の温泉で、千と千尋に出てきそうな雰囲気。段々畑の温泉で有名らしい。今度ゆっくり来たいものだ。


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雪もふらず、やっと楽しいロングライドになってきた。これから先は降らないらしいし、多分山も無かったはず。あとは下り基調でゴールだ!と思ったら。


  マリオ「次のPCが終わると、ヤビツくらいの山に登ります。」


な、なんだってー!!PC1までで全ての山岳をクリアしたものと思っていた。ロクにルートを見ていなかったことがバレバレである。


  マリオ「でも多分あそこに雪が降ることは無いので大丈夫ですよ」


マリオさんがそう言うのなら多分そうなのだろう。何度もこの辺りは走ったことがあるみたいだし。もう雪の上は走りたくないからなー。


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16:25、出発から7時間25分で、PC2・セブンイレブン下郷湯野上店(120km地点)に到着。まだグロスAveは15km/hを超えている。なんだかんだいってブルベライダーは自然にこういうペースで走ることになるのかもしれない。

しかし、たった120kmなのにこの疲労感が凄い。路面状態が悪いと、バランスを取ったり気を使うので、余計に体力を使うのだ。ダンシングもウェット路面では恐いので、必然的にシッティングが多くなる。通常、200km以降で出てくる坐骨の痛みも既に出始めている。最後の山岳を前に、入念にストレッチを行っておくことにした。


かくしてPC1~PC2は平和そのもので幕を閉じた。しかしこれは嵐の前の静けさ。本当の地獄はここからだったのだ。


(つづく)
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Fleche2012(阿賀野→犬吠埼)~③湯野上温泉~白河

■ルート


■レポート
結局17時までたっぷり休んでPC2を出発。日が暮れてきて気温も下がっている。ダウンヒルが苦手な自分としては、極力夜のダウンヒルは避けたい。頂上の羽鳥湖までは20km程度。ゆっくり登っても1時間20分程度だろう。今日の日没は18時15分付近。微妙に間に合わないが、日が落ちてもそれなりに明かりはあるはずだ。


  マリオ「下りに入る前に羽鳥湖の道の駅がありますから、そこで待っててください」


と言われ、頂上まではフリーライド。ゆっくり登ると体が冷えるので、出来る限りギヤを掛けて登る。・・・が、ほどなくして白いモノが舞い始めた。

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・・・雪だ。降らないって言ってたけど、降ってるじゃないか!でも、路面はドライ。通り雨ならぬ通り雪程度だろうと思い、先を急ぐ。

途中、長いトンネルが。「蝉トンネル」というらしい。トンネルの中は暖かい。サコライド伊豆での、「トンネルで寝た事件」を思い出した。確かにこの状況だとちょっとトンネルの中で休みたくなるわなぁ・・・。

そして800mあるトンネルを抜けるとそこは・・・


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―――吹雪だった。

またこのパターンかよ!!思わずGLAYの「Winter,Again」を口ずさみたくなるような降り方。しかもトンネルの入り口とは異なりは路面もウェットになっている。


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・・・今度こそヤバいのではないか。標高で言えば頂上まではあと200mある。この段階で路面がウェットということは、下りに入る頃には凍結している恐れがある。これは戻った方が賢明・・・と思って振り返ると、3人が追いついてきた。3人もこの雪を前に驚いている様子。


  baru「さすがにこの雪だと無理でしょう。降りませんか?」
  アーツ「もうすぐ道の駅ですし、そこで無理そうだったらギブアップしますか。」



道の駅があれば、その周りに宿泊施設くらいはありそうだ。まぁ、そこで一泊して帰るのも悪くない。元々、スタートすらしなかったはずなのだ。ここまでよく走ったよ。明るくなってからゆっくりと下って輪行でナイスプレイス・銚子を目指せばいい。


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しかし酷い雪だ。気温も氷点下に下がり、登りでもツルっと行きそうになる。それでも道の駅まで行けば解放されるのだ。残念だが、あと少しでFlecheもフィナーレを迎えることになる・・・と思っていた。しかし、この後思いも寄らない事態が待っていた。


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規定ルートが工事中・・・通常のブルベであれば試走があるわけだが、試走をしていないFlecheはこれが恐い。しかも山の上でこれが起こるなんて最悪にも程がある。


  マリオ「困りましたね・・・道の駅はこの工事中の道の先にあるんですよ」


・・・てことはギブアップできない・・・?


  マリオ「すぐ近くに湖畔の旧道があるのでそこを通りましょう。」


そして案内された道が・・・これだ。


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いやいやいやいやいや!!!めっちゃ凍ってますがな!「旧道」と聞いただけで嫌な予感はしたけれど、想像以上のツルツルっぷり。どれくらいツルツルかと言えば、普通に歩いただけで滑るくらい。なのに、全く躊躇せずにその道を進んでいく私以外の3人。しかも談笑しながら。静かな夜の山に彼ら3人の笑い声だけが響く。


・・・一体どうなってるんだこの人たちは・・・。頭のネジ外れてるってレベルじゃねーぞ!

確信した。ロングライドで怖いのは天候でもコースでもなく、同行者である。


かといって置いてかれても困る。結局の所、進むしかないのだ。なるべく新雪の上を辿るように走る。ウェットグリップも安心なGP4000Sを履いてはいるが、凍った道でのグリップ性能はどうなんだろう?などと考えて気を紛らわせないととても冷静ではいられない。

そしてどんどんと深くなる闇。確かに普通の夜のロングライドに必要十分なライトは持ってきたつもりだが、この路面では明らかに足りていない。少しでも進む路面を間違えれば即コケる。速度は10km/h以下だった。


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なんとか凍結した旧道を抜け、本道に復帰。アーツさんのブレーキには雪が詰まって氷の塊が出来ていた。ブレーキを殺された状態でよく走ってこれたものだ。
ま、そんな思いもここまで。あとは少し本道を戻って道の駅でリタイヤだ!こんな恐い思いもう沢山だぜ・・・と思ったら。


  マリオ「道の駅の営業時間、そういえば18時まででした・・・」


・・・嘘でしょ・・・嘘だと言ってよバ(ry

気温は-3℃。白河方面の道は完全にアイスバーンとなっている。普通の雨天でコケる自分がこんな所下れるはずが無い。


  マリオ「ここにいても凍えるだけですし、白河まで下るしかないですね」
  アーツ「だそうですけど・・・どうします?」



いや、どうするもこうするも!!もう選択肢無いじゃないか。退路を完全に絶たれた状態で「どうする」って・・・どうしてこんなになるまで放っておいたんだ・・・。リタイヤするチャンスは何度もあったはずだ。そのたびに「とりあえず先に」という言葉に流された結果がこれだよ!断固として反対しておくべきだった。


真っ暗。
アイスバーン。
吹雪。
気温は-3℃。
しかも、しばらく下ると九十九折になる。


――この条件で苦手なダウンヒル。


どこからどうみても死亡フラグしか無い。もう遺書でも書くべきか。思えば短い人生でした。ああ、せめてリア充になりたかry


しかし、ここに居たら冗談抜きで遭難するだけである。残された選択肢は残念ながらこの死地に足を踏み出すことだけなのだ。覚悟を決めるしかない。



  baru「すみませんが・・・防寒具とライトがあれば貸してもらえませんか。」


先ほどの羽鳥湖の旧道で、明らかにライトのスペック不足が露呈した。このまま凍結のダウンヒルなんて絶対無理だ。その点、今回有難かったのはホラフキーさんの存在である。遅くなったが、ここで彼の自転車を紹介しよう。


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名づけて「光害一号」。GENTOSの閃×6にプラスしてバーエンドにもライト×2。そしてハブ軸にはDosunA2。遠くから見るとバイクが走っているように見えるほどの明るさ。夜間にはコレ以上ないほど頼もしい存在である。

それに比べて自分の自転車はあまりにもライトが頼りない。というわけで、「僕の顔をお食べ」といった感じで、ホラフキーさんのDosunA2をお借りすることに。これ一つでも街中であれば十分なのだが、真っ暗な凍結路面ではそれでも不安が残る。

更にアーツさんがウインドブレーカーを余分に持ってきていたので、貸していただく。この時、既に着ていた枚数は6枚。7枚目を羽織り、いざダウンヒルへ。



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ホラフキーさんの光害一号を先頭に、皆走りだすが・・・速いよ!とてもじゃないが自分はスピードを出す気になれない。そりゃそうだ。ちょっとミスれば大怪我が目に見えている。肉体的な限界に挑戦するのは嫌いではないが、チキンレースのようなことは極力したくない。GPSの記録を見ると、ダウンヒルなのに自分の移動速度は10km/hを割っていた。

何故僕はこんな所を走っているのだろう。頭に渦巻くのは後悔ばかり。そうこうしているうちにも、3人のテールライトは遠ざかっていく。

羽鳥湖から白河までは20kmある。ずっとダウンヒルだ。斜度はそこまでキツくないため、雪がない昼ならば爽快なダウンヒルを楽しめるだろう。しかし、この状況では長い長い地獄への一本道にしか見えなかった。ロングライド中、本気で泣きそうになったのは今回が初めてである。

途中、工事の信号で止められる。手先の感覚も足先の感覚もない。気温は-3℃だが、下りなので体感温度はもっと低い。他のメンバーに話しかけられても何も答えられないくらい消耗している。この状況でも他3人は談笑している。もう訳がわからない。

そして工事箇所を過ぎると九十九折の始まり。グリップなんて全然しない。どう考えてもロードで降りる路面じゃない。



一体何分経っただろうか?ずっと白かった路面が灰色にいつのまにか変わっている。

  ・・・まさか、ドライ路面!?
  
お懐かしや、40kmぶりのドライ路面である。


  ・・・もう滑る心配しなくていいの?

     ・・・ダンシングしても大丈夫なの?


   「生きているって素晴らしい!!!」
   
   
前方に見えた白河の街と新幹線を見て、思わず叫んでいた。人生で一番限界に近づいた数時間だった。


(つづく)
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プロフィール

ばる

Author:ばる
群馬産のキャノンボーラー。
普段はラーメンかカレーを食べに行くグルメライドばっかりやってます。

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【長距離自転車TT記録】
大阪→東京:23時間02分
東京→大阪:23時間18分
東京⇔大阪:67時間38分
青森→東京:36時間05分

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2005年に書かれた東京~大阪の自転車向けルートガイド。情報は古くなっているものの、今でも十分使えます。


拙著の「東京→大阪キャノンボール」レポート掲載。タイムテーブルや、戦略等を詳しく書いています。


シクロツーリストの田村編集長による長距離走行ガイド本。時短法やキャノンボール挑戦時のエピソードが掲載されています。

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